
最高の人生応援映画の一本!
「どこかで誰かが見ていてくれる」 これほど勇気を貰える言葉があるんだろうか
大抵の人は自分がやっていることが大きな意味や意義を持っていと感じていないし、自分の行いが何かに結実するのか疑問に思いながら努力していたりする。その不安に対する強烈な答えがこれ。 この言葉が一体何人の背中を押したか計り知れないし、どんなことも絶対無駄にならないと思わせてくれる。
作品情報
公開日:2014年6月14日
監督:落合賢
脚本・製作:大野裕之
主演:福本清三
共演:山本千尋、松方弘樹、萬田久子、小林稔侍 ほか
上映時間:104分
配給:リバー株式会社(国内)、ELEVEN ARTS Studios(海外)
あらすじ
京都・太秦を舞台に、時代劇の斬られ役俳優として長年活躍してきた主人公・香美山清一の人生を描いた作品です。時代劇の衰退に伴い、彼の仕事は減少し、ついには映画パークのチャンバラショーに出演する日々を送ることになります。
そんな中、香美山は新人女優の伊賀さつきと出会い、彼女に殺陣の指導をすることに。やがてさつきはスター女優として成功し、時代劇映画の主演に抜擢されます。しかし、香美山はすでに引退しており、さつきは彼に映画への出演を懇願します。最終的に香美山は撮影所に戻り、かつての仲間との約束を果たすため、そして最愛の弟子であるさつきに斬られるために、最後の舞台に立つのです
感想(ネタバレあり
ただただ主役の香美山清一がカッコいい。 セリフがそんな多いわけではないのに何でこんなにカッコいいだろうか。
寡黙で不器用、ただ目の前にある自分に出来ることを淡々とこなしていく姿は美しささえあると思います。

深い堀が刻まれた顔と、鋭い光を宿した瞳が印象的
斜陽となってしまった時代劇に、そこでの切られ役を生業としていて老骨に鞭打つ主人公。
それとは対照的に若手のホープとして勢いに乗りこれからさらに羽ばたこうとしているヒロイン。
この対比もなんだか人生そのものの対比のように思えて何とも言えない切ない気分を誘いますね。
劇中劇だからとはいえ長年やってきたことへの矜持と、新しいものへ挑戦するにしては年を取り過ぎたという諦観の両方が混ざった何とも言えない表情や雰囲気は演技という枠を超えたものを感じざるを得ないです。
今作のメインはもちろんヒロインである若手女優・伊賀さつきとの師弟関係とそこに生まれる信頼の描写ですが、これがまた美しいんです。 老いた師匠と若い弟子という構図はいままで沢山の映画の中で使われてきた、いわばお約束の構図ではありますが技術だけではなくその心意気までも伝えようとする香美山と、常にリスペクトをもって接する伊賀の関係は見ていて本当に気持ちが良いものでした。 師弟関係の理想形ですよね。
ただこのヒロイン「結婚するなら香美山さん(主人公)みたいな人がええわ」とかオッサン殺しド直球みたいなセリフを言うのでさすがにそれはいう方も鈍感過ぎんかと思ったりしましたがw
また後半の、香美山が復帰する流れも良い。
一度は復帰の依頼を断るものの、伊賀との稽古の中で自身の中にくすぶる時代劇への思いに気付いて復帰する。
今度は弟子であった伊賀が香美山の背中を押すこの流れにはグッときました。 この時のBGMも素晴らしいです。

個人的に大好きなシーンの一つ
伊賀が引退した香美山にもう一度出てほしいと言われて断ったものの、裏山を歩いているときにかつてのチャンバラ友達の影を見たシーン。 単なるノスタルジーではなく自身の中にあるまだやれるのではないかという葛藤や迷いまでをも表した素敵なシーンになっていると思います。
そしてなんといっても最後の殺陣シーン!!
香美山が将軍役の松方弘樹に「怖気づいたんでっか?」と挑発的な言葉を行ってから始まる一連の殺陣シーンは圧巻。
最後に香美山が伊賀に切られますが、それはまさに技術と心の伝承の象徴であり香美山が生涯をかけた人生の総決算だったのだと思います。 最後のシーンで桜が降り注ぐ中に倒れる香美山は本当に美しくてカッコよかったです。
2025年現在この映画のDVDもBDもプレミアがついてしまっていてかなり高値になってしまっているようですが、万難を排して見て頂きたい映画です。